大判例

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名古屋地方裁判所 昭和24年(ヨ)204号 決定

申請人 原田肇 外三七八名

被申請人 岡本自転車株式会社

一、保証 金五千円

二、主  文

申請人が現に被申請会社の従業員たる地位を有することを仮に定める。

訴訟費用は被申請会社の負担とする。

三、理  由

労働基準法第二十条の規定によれば、使用者が労働者を解雇しようとする場合には少くとも三十日前にその予告をせねばならず、もし三十日前に予告をしない場合には三十日分以上の平均賃金を支払わねばならないことが明かである。即ち使用者が労働者を即時に解雇しようと欲する場合には必ず三十日分以上の平均賃金を予告手当として支払わねばならないのである。

そこで本件について考えて見る。被申請会社が昭和二十四年六月七日申請人等に対し申請人等を「六月八日附をもつて解雇する」につき「六月九日以後出勤に及ばない」旨、すなわち申請人等を即時に解雇する旨通知を為したこと、右通知書中に「六月八日迄の賃金および退職手当と共に予告手当金三十日分を各所属勤労係において支払をする」旨記載のあつたことは当事者間に争ないところであるが申請人等提出の各疎明資料によると、被申請会社は前記解雇処分の効力を生ずべき六月八日の当日は勿論その後においても同月十五日頃までは予告手当金のなす準備全然なく、右手当金受領のため出頭した被解雇者に対しその支払を実施し得なかつたことが瞭かである。尤も被申請人挙示の疎明資料によると、被申請会社はその後に至り支払の準備を完了し同月二十三日右金員を名古屋法務局に供託した事実を認め得るけれども、右供託手続はその時期において既に遅延し居るのみならず、その前提要件たる申請人等が弁済の受領を拒み又は弁済受領不能の状態にあつたことにつき疎明がないから供託としての効力を生じ得ないこと言をまたない。

右のように被申請会社の申請人等に対する本件解雇処分は労働基準法第二十条の趣旨に違反し、被申請会社所期の即時解雇の効力を生じ得ないこと勿論であつて(但し右行為が同条所定の解雇予告としての効力を有し予告期間三十日を経過した七月八日以後において解雇の効力を発生する余地ありや否やは別問題である)、従つて右解雇処分の無効なることを前提とし申請人等が現在なお被申請会社の従業員たる地位を失わぬとなす申請人等の主張は正当であつて採用に値する。

しかして被申請会社が申請人等を既に解雇したとなし同人等の従業員たる地位を無視する態度に出ていることは申請人等の疎明資料によつてこれを認めるに難くないから、申請人等は仮処分手続をもつてこれを阻止する緊急の必要あり本件仮処分申請はその保全の理由を具備していることも明瞭である。

よつて申請人等の本件仮処分申請を相当と認め、訴訟費用の負担及び保証金の供与につき民事訴訟法第八十九条、第七百五十六条、第七百四十一条を適用して主文のように決定する次第である。

(裁判官 山口正夫 熊田康一 奧村義雄)

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